■場面は、再び、キーツネと塩川&霧島サイド。
「ということで、今、“個勉塾”の信頼が揺らいでる状態だと私は踏んでいる。」
「なるほど。だから、今が我々にとって大チャンスなわけですね。」
「そうだ。ただ、向こうにはタヌーキがついている。“仕事の仕方”と“チームワーク”については、恐らく改善してくるだろう。」
「はい。」
「だから、我々はその上をいく。幸い、我々は大手だ。彼らの弱点の“仕事の仕方”や“チームワーク”については、外部の研修機関も使って、かなり訓練しているから、“天下一個別”の社員は割とできているはずだ。」
「はい、確かにそのレベルは大丈夫ですね。」
「まあ、キミらには一抹の不安はあるがな…。」
「キーツネさん、我々も本気を出せばちゃんとしてますから、ご安心ください。」
「分かった。」
「それで、その上というのは?」
「今回の戦略は、ずばり!“ホスピタリティ”の徹底だ。おもてなし感を強化して、“信頼”を勝ち取る作戦に出ることにする。つまり、今回は“個勉塾”か、我が“天下一個別”のどちらが、“信頼”されるかの勝負だ!」
「はい!」
「そのために、まずは、講師達に“ホスピタリティ”のマインドを植え付けなければならない。講師達を、我々の手となり、足となり、生徒や保護者をもてなす“ホスピタリティ”軍団に作り上げるんだ。」
「あっ、はい。具体的にはどうすれば?」
「手始めに、講師の接待を強化しろ。」
「接待?」
「そうだ。講師を接待することで、彼らの気持ちを持ち上げ、我々の考えに染める必要がある。」
「なるほど。洗脳みたいなもんですね。じゃあ、早速、キャバクラに連れて行きます!」
「何を言っているんだ!女性講師もいるんだぞ、何でキャバクラなんだ、ほんとに…。」
「あっ、すみません!」
「接待と聞いて、すぐにキャバクラをイメージするなんて、塩川君はいったい普段何をしているんだ!」
「いやまあ、私、結構キャバクラが好きなんで…。」
「キミのことはどうでもいい。霧島君、塩川君はあてにならないから、講師の接待はキミが担当してくれ。」
「はい、分かりました。遊園地とかでいいですかね?」
「キミもバカか!何で遊園地なんだ!」
「えっ、私、遊園地が大好きなんで…。」
「やれやれ…。“天下一個別”の人材レベルもこんなもんなのか…。」
「あっ、すみません。」
「居酒屋とかでいい。飲まして、食わして、生徒のことや教室の話をして、盛り上げてくれ。」
「あっ、はい!」
「そして、講師達に“ホスピタリティ”のマインドを理解させ、普段の教室内で徹底させてくれ。最低限、やることはこれだ。」
一.身だしなみを整える。(茶髪禁止。スーツの着用の義務付け。)
二.挨拶を徹底する。(誰かが教室に入ってきたら、授業中でも大きな声で挨拶をする。)
三.生徒の出迎え見送りを徹底する。(必ず挨拶以外に一言、二言声をかけることも忘れずに。)
四.生徒とのコミュニケーションを強化する。(休み時間は、とにかく生徒と楽しく会話する。)
「要するに、どれもサービス業としては、当たり前のことばかりだ。ただ、学習塾というのは、この基本的なことがなかなか徹底されない。だから、ここで差ができるんだ。そして、実は、この“ホスピタリティ”が、人々から“信頼”される最大の武器なんだ。」
「なるほど、分かりました!キーツネさん、任せてください!今後、“ホスピタリティ”を徹底します!」
「しっかり、たのむ。」
「はい!“個勉塾”、今に見ておけ!“ホスピタリティ”でぶっ潰してやる!」
■場面は、再び、タヌーキと我利サイド。
「ええか、我利ちゃん。今回はとにかく“信頼”を勝ち取る戦いになるさかい、さっき話をした“仕事の仕方”や“チームワークの強化”を早急に整備せなあかんで。」
「はい、任せてください!」
「ほんで、それに役立つための“武器”も与えとくわ。」
「ひゃー、そんな凄い“武器”があったんですか!有り難うございます!タヌーキさん!で、その“武器”とは何ですか?」
「手帳“や”。」
「えっ?“手帳”…ですか?」
「そうや、題して、“魔法の手帳”。」
「う~ん…“魔法”って付けてますけど、単なる“手帳”でしょ?」
「まあ、そうやな。」
「それなら、皆、持っていると思いますけど…。」
「持ってるだけやったら、意味ないやん。それを使いこなしてこそ、“魔法”になるわけやん。」
「それはそうかもしれませんけど…。」
「ええから、ええから、騙されたと思って、“手帳”を書くことを徹底してみ!」
「ちなみに、どんなことを書いていくんですか?」
「例えば、上司なら、部下に指示をしたことを“納期”の期日のところに書いておくのは、まあ普通やわな。でも、納期の三日くらい前の日付のところにも、その“仕事をチェックする”っていうタスクを書いておくんや。そうすると必ず部下の仕事の納期が守れるはずや。たった、それだけで仕事が劇的に変わるで。」
「そうなんですか?」
「そうや。そして、もちろん、生徒対応にも効果を発揮する。例えば、宿題忘れて来た生徒がいるわな。そのガキんちょに“来週忘れて来たら許さへんからな”なんて言ってたりすると思うけど、できひん塾人はこれをよく忘れるんやな。」
「あっ、はい。」
「ガキんちょからしてみたら、宿題をやってきても、やってこんでも、結局スルーされてるわけやから、その先生のことを信頼できひんわな。」
「そうですね。」
「だから、約束したことは、全部、“手帳”に書いとくんや。人間なんて、所詮、頭で覚えようと思っても絶対に忘れる生き物や。自分の記憶力をあてにせん方がええ。」
「確かんそうですね…。」
「他にも、こんな使い方もできるで。」
「はい。」
「例えば、あるガキんちょに彼女ができたとするわな。ほんで、その調子に乗ってるガキに彼女の名前を聞くんや。まあ、仮に、“花子”という古典的な名前にしとこ。そして、その名前を一ヶ月先の手帳に書いとくわけや。」
「はい。」
「ほんで、一ヶ月後に“花子ちゃんと仲良くやってんの~”なんて聞くと、そのガキんちょがビックリして、“この先生、自分の彼女のことまで覚えてくれてた~”って感動するわけや。つまり、そういう些細なことまで覚えているちゅうことが“信頼”を勝ち取るには重要なんや。」
「なるほど!」
「ええか、我利ちゃん。多くの塾人は、たかが“手帳”とバカにするかもしれんけど、ちゃんと使えば、人を感動させる“魔法の手帳”になるちゅうことを覚えとき!」
「はい!」
「個別指導はサプライズ!人の心を感動させて何ぼの商売や!」
「分かりました!有り難うございます!とにかく、明日から、“魔法の手帳”大作戦を実施します!」
「おお、せいぜい頑張りや~。」
大手に勝つ戦略(その五)
一.仕事の仕方を整備すべし。
(時間の意識を持ち、納期、計画、準備を明確にして仕事に取り組むこと。)
二.チームワークを強化するべし。
(ホウレンソウとチェリーの徹底と、頻繁な声掛けの習慣化をはかること。)
三.“信頼”とは、“小さな約束”を守ることの積み重ねで得られるもの。その約束を守るために、“魔法の手帳”が大きな武器となる。
~大手塾VS個人塾~
第五ラウンドは、“信頼”の攻防(ホスピタリティVS魔法の手帳)の対決だ!
果たして、勝負の行方はいかに!
※明日に続く
オーラのないマッチメーカーこと、株式会社WiShipの岡田がお送りしました。