十六.第八ラウンド・・・“営業戦略”の攻防(ピンポン営業VSお得意様営業)
■場面は再び、“天下一個別”の本社ビル内。
「で、キーツネさん、タヌーキとやらが思いつかないような戦略はと何ですか?」
「まあ、待て。そう答えを急ぐな。」
「あっ、はい。」
「いいか、塩川君。塾としては、この十二月は何に力を入れる時期だと思う?」
「そりゃあ、やはり入試が近づいてきていますから、入試の対策だったり、冬期講習会だったり、その辺に意識が取られると思います。」
「そうだろう、そうだろう。」
「それが何か?」
「そこに、弱点があるんだ。」
「えっ?どういうことですか?」
「ふふふ。」
■場面は再び、“からくり屋珈琲店”。
「十一月の生徒数の伸びなんですけど、それが、不思議なことに、それなりに増えたんですよね。」
「何で不思議やねん。」
「だって、“天下一個別”は例のAIを使った教務システムに加えて、テスト対策を我々と同じにしてきたんですよ。今まで他塾との大きな差別化になっていた“個勉塾”のテスト対策を丸パクリですよ。ひどくないですか?」
「別にひどいわけあらへんやん。上手くいっている塾の真似をするなんて、当たり前の話やん。」
「でも…。」
「だいたい、他塾に簡単に真似をされるようなもんをやってる方が悪いんやって。」
「そうですけど。でも、丸パクリされた時点で、生徒数は伸びないと思ていたんですけど、案外、影響がなかったんで、拍子抜けというか…。」
「まあ、影響が出て来るんは、これからやろな。」
「やっぱりそうですか!」
「向こうがそれなりに成績向上を達成していて、ジブンとこと同じレベルのテスト対策をしてきたとなったら、分が悪いのは確かやろな。」
「う~ん…困りましたね。何か打つ手はないですか?」
「そうやな。ないな。」
「ないですって!そんなに簡単に諦めないでくださいよ。」
「だから、そんな魔法みたいなもんはないって、再三言ってるやん。」
「でも、あなたは神様なんだから、何か絞り出してくださいよ!」
「う~ん…。ジブンごときに、そこまで挑発されたら、しゃーないな。あれやるか。」
「あれとは?」
「うひゃひゃ。」
「もったいぶらずに教えてくださいよ!」
「う~ん、どうしようかな~。」
「早く、教えろ!!!」
「あっ、はい!」
「あっ、すみません!」
「ん?わし、ジブンの言葉に思わず反応してしまったけど、今、暴言吐いたよな?」
「いえ、暴言なんて吐いてません!」
「そうかな~。今、わしに向かって“教えろ!”って言わへんかった?」
「はい、言ってません!」
「そうか。今のは幻聴やったんかな。わし、何か疲れてるんかもしれへん。」
「そうですよね。タヌーキさんは、人気者でお忙しい方ですからね。」
「そうやねん。わし、引っ張りだこやねん。」
「そんな時に申し訳ないですが、十二月の戦略について教えてもらえませんか?」
「ああ、そうやった、そうやった。えっとな…。」
「はい。」
「あっ、その前に、ジブンに“勝つ戦略”の考え方を教えとかなあかんな。」
「はい、お願いします。」
「あんな、勝つための戦略ちゅのはな、基本的には二つの観点が重要なんや。」
「はい。」
「一つは、“皆がやらないことをする”。もう一つは、“皆がやらない時にする”。」
「なるほど。」
「ガチンコ勝負でやる戦略もあるにはあるんやけどな、この二つが一番勝てる確率が上がる戦略なんや。」
「確かにそうですね。」
「ということは…。」
■キーツネと塩川サイド。
「つまり、弱点というのは、他塾が冬期講習や受験対策に意識を取られるということだ。」
「あっ、はい…。」
「他の塾がそっちに力を入れる時だからこそ、我々は営業に力をかけるんだ。」
「えっ!この時期にですか?!」
「そうだ。相手が手薄になっている部分や意識していない部分で攻め込むのが、勝つための最良の手段なんだ。」
「でも…。」
「でもじゃない。“個勉塾”はまあまあ教育に熱心な塾なんだろ?だったら、あそこの社員達は絶対に“入試対策”や“冬期講習”に一生懸命になるだろう。まあ、もちろん、それは悪いことではなく、塾としては正攻法だ。だから、我々はその逆を行く戦略を取る!」
「あっ、はい。」
「いいか、塩川君。ミーは勝つためには手段は選ばない。それが、やるかやられるかの勝負なんだ!」
「はい、分かりました!」
※明日に続く
オーラのないマッチメーカーこと、株式会社WiShipの岡田がお送りしました。